古典医学では、植物による食物については詳しく記載されていますが、動物に関しては詳しく説明されていません。牛、馬、豚、鶏、羊程度で、魚類については生活の上であまり手に入らなかったと思われます。また、食べ方についても現在の私たちと全然違っていました。私たちは、食べやすい肉の部分を常に食していますが、中国人は今でも頭から爪の先まで無駄なく食べているようです。例えば、エスキモー人は、氷の中で生活をしています。よく話を聞いてみると野菜類を食べていないのにも関わらず、高血圧症、動脈硬化症の人は少ないのです。これは、アザラシなどを食べるときに、肉を食べるのではなくて、内臓や腸を重宝するそうです。アザラシは、海中にて小魚を食べ、小魚は海草類を食べています。アザラシの胃や腸の中には、不消化の小魚がおり、栄養源の貴重なものとして、有効利用されていたのです。これは、私たちも日常考えさせられる食習慣の一つでもあります。
また、大きな動物である牛、マグロなどは、人間の形に非常に近く、動物の中での近親結婚のように、食物として多くの害があることも知る必要があります。栄養価が高いだけではいけないのです。貝類、小魚、野菜類、海草類のように、人間の体型とほど遠い姿の食物が本当はよいのです。
私たちの生活している現在は、腹が満腹になるほど、食材が溢れています。しかし、考えてみますと2000年の歴史の中では、いつも飢えに苦しむ生活が長く続いていました。その課程の流れの中に、私たちは生きています。花を育てるのには、種を蒔くのですが、花が咲く前に肥料を与えすぎると花はすぐに枯れてしまいます。人間も同じではないでしょうか。20歳頃までは、体を作る期間で数多くの栄養素や必要なものがいりますが、その後いかに長く保持することができるのかが、問題なのです。生命の維持に必要なものだけで本来は充分なのです。
私たちの祖先は、精進料理という正食を長い経験の中から、生みました。使用される材料には、陰陽、五行説の中から代表的なものを選び、季節を味わい、一つを食べ終わる頃に次を出す配慮と、食後の気分を和らげる食器の鑑賞についても美術と芸術の世界まで入ることにより、会話するお互いが生きている喜びと生命活動の源になっているのです。これを私たち一般の人々が応用したものが、おせち料理になっています。自然界と陰陽と身体に必要な五行表のエキスがおせちであることを再認識して、日常にも応用することが養生につながっていくのです。
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