次は、精に関してです。古典におきましては、精とは男女の交互にて関係ができますが、それ以前にできるものを「精」といっています。この精をコントロールする臓が、腎なのです。精の不足は、生命力の減退になります。中年を過ぎますと大切な陰の働く能力が、どうしても若いときのようには発揮してくれません。自動車と同じで、古くなってくるとエンジンその他は異常がないのに、燃料ばかり消費して、馬力がでないという状態と同じなのです。
この状態に似たのが、陰気不足、腎の働く作用の減退になっています。当然、すぐに老け込んできますし、精力も減り、生命力の寿命も衰えることになります。生を受けた人間は、腎の陰気の地味な働きと心の陽気の活動的な働きとが、お互いに上下交流することにより、陽気は下りることにより足腰を温め、陰気は昇ることで、胸や頭を冷やして、バランスを保っているのです。
私たちが、精神活動、精神修養などに精神は腎の「精」と心の「神」が調和されていることを理想の姿として考えています。古い言葉に、「胆に命ず」、「肝心要(かんじんかなめ)」、「腹をくくる」、「臍下丹田に力を入れる」というように、日常の言葉にも重要な意味が隠されているのです。
以前、春の肝の働きと物の始まりの話をしましたが、その始まりの本当の元は、五行の中にある腎の水がしっかりと肝を育ててくれているから、肝の芽が新しく伸びてくるのです。私たちは、そういう意味からも腎をもっと大切に管理するが、丈夫で長生きをする養生につながるのです。その為には、まず何回も説明させていただきましたが、身体を冷やさないことと、いつも腎の陰気を助けてあげるために陰気を補うことです。
それには、腎は水の処理をする臓器なので、水不足になって乾くことがないように、腎の働きに負担をかけないことです。水不足になると血液中の水分も乾き、ドロドロの血液になるため、細い毛細血管では流れにくく、循環器の各症状が発生してくるのはご承知のことと思います。先日、腎臓に詳しい人工透析を指導している医師にお話を伺いましたが、米国の最近の医学では、ウォッシュ アンド ウォッシュ セラピーとして、絶えず水を体内に流すことにより、腎臓機能を強化させるのです。休息させることは良くないと言っておられました。この点から見てみますと、腎の生理は東洋医学の思想も西洋医学と合致しているようです。重労働やセックスの過剰、塩の摂りすぎ、水の不足は、腎の気と精を減退させる代表的なものなので、充分気をつけて下さい。
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