古典の医学書の中には、生理学、病理学、治療学、診断術などを細かい項目別に分けて、身体機能の正しいあり方について書かれています。その中で、東洋医学独特の診断術に、臓腑の現在の症状、病体の状態を簡単に判断できる方法として、脈を診る診断方法があります。
昔は、医者に診断してもらうことを「脈を診てもらう」といっていたほどに、脈を診ることの重要性と診断力は大きな役割なのです。また、古典の五行説や経絡の流れ、臓腑の変調を脈によって確認することができるのです。現在でもこの脈を診る診断方法は、しっかりと受け継がれ、古典医学を忠実に守り、鍼灸の発生した源からの治療原則により臨床に応用されています。
この脈を診る診断方法は、都合の悪い問診で正確な回答を得ないときに発揮します。例えば、「最近、強いストレスを受けたり、腹立つことがありませんでしたか。」「思い悩んでいることがありますね。」「胃の働きが少し悪いですか。」と聞いてみると、本当の症状と違うことを言ったりすることがあるのです。脈を診てみると訴える話とは全然違うものになったりもするのです。効果のある治療を行うことが、大事な決め手となりますので、患者の訴えに対して判別できる能力を持つことが、治療家に要求されるのです。
脈を診る位置、場所は図の通り手首内側の親指側の斜線部分です。別の指を軽く抑えることで、脈の振動を探して下さい。強く押さえすぎますと脈は感じないですし、軽すぎると脈の変化が分かりません。程良く打っている脈の中間にある鼓動を感じて下さい。また、診る度に、押す力に強弱がありますと毎回違った脈動に感じますので、いつも同じ押し方で診ることが大切です。脈の変化は、誰にでも分かります。速いでしょうか。遅いでしょうか。1分間に、大体70回前後の拍動が平均値ですから、60ぐらいでは遅いですし、80以上では速いのです。この脈の打つ回数が、速いときは、大体風邪の引きはじめか、熱があるときの症状です。スポーツや労働の後に早く打つ場合は、違いますので、ご注意下さい。遅いときは、内臓のどこかに慢性的な症状や冷え症状がある場合です。また、心臓に何らかの原因も考えられます。 速い脈の時は、熱症状や急性症状なので、鍼灸治療で十分効果を得ることができますが、遅い脈の時は難しい場合も多く、医師の診断が必要な場合もあります。自分がどのような脈をしているのか知っておくことも大事な自己管理です。
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