今までに肝、心、胃の働きや性格を述べさせていただきました。読者の中には、少し専門的すぎて難しすぎるとの声があるかも知れません。私たち治療の中でもこのような難しい古典は嫌だとして、現代医学の学術に沿った理論で臨床を行っている方も多くおられます。要するに効き目があればよいのですが、鍼灸に関して言えば、発生から今に至るまでの道程をよく知れば東洋医学の原則を熟知するには当然必要になってくる学問なのです。皆様には関心のある内容だけでもご理解していただければと思っております。
春は肝、夏は心、土用は胃と季節と臓の働きもありました。秋は肺で「金」の性格です。肺の働きに、何らかの変化が生じると鼻に関する症状が出てきます。風邪を引いたときの鼻声、鼻水などが代表です。扁桃炎、気管支なども肺に関して同じ症状が出ます。肺の働きの弱い人は、平均して白っぽい顔色を呈しています。そして大事なことは肺は皮膚に大きく影響を及ぼしていることです。以前も書きましたが、秋から冬にかけて外気が寒くなってきているときに、薄着でいると背部がゾクゾクとして寒冷の邪が皮膚表面に侵入してきます。体内に陽気が充分にあれば、その寒冷の邪を簡単に追い出すことができるのですが、寝不足、ストレス、過労などで陽気が不足しているときは、寒冷の邪が皮膚から体内に侵入するために、少ししかない陽気と戦い発熱症状に呈するのです。夏の熱いときは、体内に熱こもり、息苦しくなります。これは汗で発散することにより、皮膚の働きで体温の調節をしてくれています。この外の気温と体温の調和は皮膚体表の微妙なセンサーのおかげであり、この作用が肺の作用なのです。寒いときは正しくは皮膚表面が閉じており、体温を守ってくれています。職場ですぐに風邪を引く人となかなか引かない人がいますが、それは肺の気の巡りの多い、少ないが関係しています。
肺の働きを助けるには、辛味の唐辛子などが身体を温めて陽気を補う食物として、古くから漢方薬にも応用されています。冬の寒いときに鍋物などやうどんなどに唐辛子を入れることにより、身体を温めることが風邪を引かないための肺を丈夫にする養生法になります。また、このタイプの症状の人は家でじっと静かにしていることが多いので、時には外に出て汗が出るほどのスポーツや散歩などを行うことが、肺や気管支の弱い人や風邪を引きやすい人には必要になってきます。
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