前章の肺の働きについて少し補足をさせていただきます。食べ物は胃と腸で消化吸収されて、陽気(エネルギー)になりますが、「気」と「血」とに分かれて造られます。血は体内の血管を通じて巡っています。気は電気のように姿形がないのですが、体の内外を巡り、特に体表の皮膚上を巡ることによって体温保持をしています。例で言いますとサイダーやビールを飲んだときに口の中に広がる炭酸ガスの気泡が気なのだと考えて下さい。この元気な作用が体表を守ってくれていると思って下さい。
では、腎の作用について説明します。腎は身体の下方奥深くに静かに位置しています。腎の性格は冬で、「水」の性質を持っており、いつも水の中に存在しています。腎の働きに変化が生じると耳鳴りや難聴になるといわれています。また、腎の体質としては顔色が黒く、人工透析をしている人などは平均して黒味の顔色をしていますので、確認していただけると思います。そして最も大事なことは腎の作用に骨が含まれていることです。体内に水不足が生じると骨髄液の水分も減少して、背骨が硬くなるため前屈後屈ができなくなり、腰痛の大きな原因になったりします。また関節には、関節液として潤滑油の働きをしていますが、ここでも各関節にある水分が不足するため関節を構成している骨に痛みが生じてきたりするのです。
味では、塩味が作用します。大根の生に塩をふりますと大根はしなっとなりますように、塩にはものを柔らかくする作用があります。ですから、腎が硬くなり過ぎているとき、塩が調整してくれているのです。 腎は他の臓と比べて少し硬い状態が正常とされています。他の臓とはその点が大きく違っています。東洋医学の考え方では、緩みすぎておらず、カチカチに硬くなり過ぎていない、程良い固さの状態を維持するために、塩の作用を重要視しているのです。腎は水を含んで血の原料として大事な役割を発揮しています。治療に来られる一般の方は水不足の方が多いようです。水不足になりますと足の冷えやのぼせが出てきます。また、腎の機能が弱っている人は、暗い場所や高いところへ昇ったりすることを恐がる面があります。生命力の母である腎の精気を労働やセックスなどで使い果たすと冷え症、腰痛、脚が弱ってきます。そして物忘れも多くなり、同じ作業を繰り返す仕事などが根気よく続かないこともあります。
寒冷のところで立ち仕事をしたり、一日中立ち仕事をすると血行が悪くなり、下半身の水の滞りが生じてきますので、腎の働きにブレーキをかけます。充分気をつければ避けられますので、気をつけて生活して下さい。
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