前章では、肝について説明させていただきましたが、読者の中には「本当かな?」「都合良くまとめたなぁ」と半信半疑の方もおられると思います。しかし、あの五行の表は東洋医学の羅針盤とも言える最も重要な診断術であり、これを理解しない治療家は磁石なしで登山したり、外洋へ出るぐらいの危険性があるのです。また、肝の症状には親からの体質もあれば、日常生活での影響があることもご承知下さい。
次に、心の働きや作用について述べさせていただきます。五行の性格は「火」であり、熱性に近い活動的であることが想像できます。心が疲れてくると舌に反応が出てきます。心の病の代表には、高血圧症や動脈硬化症などがあります。この症状を持っている人々は、顔を赤色にしていることが多いです。平常は普通の人でも、怒ると血圧が上がり、赤い色になります。また、心の主な働きの中に、血管の管理があります。心臓のポンプによって送り出される毛細血管までの血液を保護管理しているのです。もし何らかの原因で、心に変化が生じますと血管や心臓のポンプに異常が出てきます。
例えば、脳内出血や脳梗塞などの後遺症などで舌がうまく回転しない人も、この心の作用から出ています。心の働きは、興奮する働きが多いのです。それは陽気が盛んな臓器だからなのです。この熱性を抑制させるには、食物の中で苦味が良いとされています。緑黄色野菜の青い若葉などはほろ苦くて良いのです。アロエの葉も苦みが多く、高血圧症の人にはとても適しています。しかし、このタイプの方は苦味の食物をあまり好まず、美食が好きなようです。そしてこの心の症状の人はよく笑います。大した話でもないのに、笑いながら話をします。これも心の原因のひとつにされています。
これは特に女性に関係しているのですが、出産をすることは女性にとって大きな仕事であり、とても多く血を消費します。人間はものを考えるとき、労働するとき、目でものを見つめるときなどは、考えられぬ程の血を消費します。出産では多量の血の不足を起こしているわけですから、少しでも血液の減ることを予防しなければなりません。そのために、お産の後には目をあまり使わないことが非常に大切なことなのです。手術や出産、ケガなどの出血による血の不足は、前章の肝の作用にも影響があります。五行の表では「視る」の欄は、心の機能になっており、内容は説明したとおりです。このように単独でなく、各臓にお互いに関係していることもあります。
このような古くさい話は、現代では通用しない面も多々ありますが、五行の表に出ている各項目の裏付けは長い体験から生まれた実践の積み重ねの真理であると私たち治療家は、今でも信頼しているのです。
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