肝の働きが、胃を脅かす考え方は五行の基本的なことであることは、説明させていただきました。また、肺の働きが、肝を脅かすことも知っていただけたと思います。東洋医学はいま訴えている病症を治すだけでなく、今後出て来るであろう病状(未病)の治療に大いに力を発揮するのです。鍼一本の治療行為の内側には、膨大な治療原則と正しいツボ運用の重要さが秘められています。
五行のの表に五味(酸、苦、甘、辛、塩)の項目があります。この食べ物というのは、私たちが参加できる唯一の養生法でもありますので、五味についてもう少し掘り下げて説明します。
肝の作用には、酸味がよく働きます。時々、断片的に話が出てきたと思いますが、肝は筋、腱によく作用して、血を使いすぎる労働により、筋肉痛やこむら返りなどを起こします。また、ストレスや頭脳労働などでも血の消費は激しく起こるため、血は不足します。このような状態になりますと、血を貯えている肝の精気(肝が正常に活動する力)が減退して、目の疲れ、筋肉痛、怒りなどの症状を呈してきます。この時に、酸っぱい食物を摂ると肝の働きを収れんさせることができます。(収れんとは収縮させるような意味と考えて下さい。)だから、このむ酸味が不足すると肝の働きが緩みだしますので、適当に酸味の物を摂取するようにしてください。しかし、酸味が必要だからといって、生の酢を飲むことは止めてください。舌やのどの奥がキュッと縮む感じがしますが、必要以上の酸味の摂りすぎは考えものです。
食欲旺盛の方には、食欲を減退させるためにも胃の収れんを起こす酸味は大変効果があります。また、不思議なことに、肝の働きに変化が出ますといままで何ともなかった人に酸味の食物が好きになったり、嫌いになったりしてきます。食物の嗜好で、どの臓に変化が出ているか判断できますので、気をつけて観察して下さい。
酸味を多食すると筋が硬直しますので、スポーツ選手など運動する方はケガにつながることがあるので、気をつけて下さい。健康食のブームで、酸の効用がよく話題にあがりますが、これは東洋医学の古典からの説明と現代医学の研究から発表されているようです。
子供の頃、サーカスの人々が酢の物をよく食べると聞きました。仕事上、程良い緊張をすることは大事であったように思われます。また、おにぎりに梅干しを入れます。これは、腐敗防止と言うことだけでなく、疲れを取る作用があることも生活の知恵からわかっていたものと思います。
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