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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋 第62号(2018.12.31)

◆2018年今年の漢字は災ということになったようです。振り返ってみれば多くの災害が日本列島をおそいました。7月の西日本豪雨では岡山、広島、愛媛などで多数の死者が出ました、9月の北海道地震では大規模な土砂崩れとともに全域停電(ブラックアウト)が起こりました。9月には第2室戸台風をしのぐ台風21号の暴風雨のため関西空港が冠水しました。滋賀県は比較的被害が少なかったとはいえ、7月豪雨でも、9月台風でも死者が出ています。6月には米原市で竜巻被害がありましたし、台風20号では彦根城の天秤櫓の壁が崩れました。2019年はいよいよ平成最後の年になります。新しい年号の時代には災いを転じて福となすことができるでしょうか。

◆2018年は、さまざまなスポーツ分野で日本人選手の活躍がみられました。年初の冬季五輪では過去最多のメダルが得られ、中でも羽生結弦選手は男子フィギュアを2連覇し、のちに国民栄誉賞を受けました。カーリング女子の活躍によって「ソダネー」が流行語になりました。テニスでは大坂ナオミさんが全米オープンを制しましたし、野球では大谷翔平選手が二刀流でMLB新人王を獲得しました。来る2020年東京オリンピックでも多くのアスリートの活躍が期待されます。一方、日大アメフト部の悪質タックル事件を機にパワハラ事件が数多く取り上げられ、スポーツ界だけでなく組織と個人をめぐるあり方を考えさせられました。

◆京都大特別教授の本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞されました。長らくノーベル賞の有力候補と言われてきましたが、免疫チェックポイント阻害剤オプジーボの開発によって、がんの免疫療法に大きく道を切り開いたことが評価されました。免疫部門では滋賀県出身の坂口志文先生の受賞も期待されていました。制御性T細胞の発見という画期的な業績ですので、がんだけでなくさまざまな自己免疫疾患への応用が可能です。精神医学の分野では近年、統合失調症・うつ病の軽症化や、発達障害の増加など病像の変化がみられます。現在のところ精神疾患の原因に迫る治療法は未確立ですが、やがてブレイクスルーがおこり、新しい治療法の見出されることが期待されます。

◆1998年以降長らく自殺者数が3万人を超えていましたが、自殺対策基本法の改正などを踏まえ、官民あげての自殺対策が進むことで、2017年には2万千人台となっています。しかしその中でも未成年者の自殺者数は減っておらず、自殺者全体の2.6%を占めています。さまざまな要因を考えていく必要がありますが、子どもの精神疾患の初期症状に早期に気づき適切に対応できていれば、防げる自殺も多いのではないかと思われます。しかしこれまで学校教育現場ではなぜか精神疾患について教えられてきませんでした。精神保健について高等学校の学習指導要領が見直され、2022年入学者から適用されることになります。我が国の精神保健医療福祉が改善していくためには、精神医療の質の向上とあいまって、精神疾患に関する正しい理解を進めていく必要があると思います。

(滋賀県精神科診療所協会 上ノ山)




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