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精神保健福祉協会だより第48号(2013.4.30) 編集後記

◆東京の桜はお彼岸には満開となっていたましたが、彦根ではやや遅れて4月10日ごろでした。その後の花冷えで今年は比較的長く花を楽しめました。NHK大河ドラマ八重の桜を見ていると、幕末には彦根遷都の話があったとのことです。その場合、明治維新はどうなっていたのだろうかと想像してみるだけで楽しめます。
 その彦根に陸上のスーパースターが登場しました。4月29日、織田幹雄記念国際陸上・男子100メートルで彦根出身の高校2年生桐生君がジュニア世界タイの10秒01を記録しました。世界最速のウサイン・ボルトをはじめ、未だ10代で10秒の壁を切った人はいないようです。世界一のランナーが同じJR琵琶湖線に乗って通学していると考えるだけで楽しくなります。周囲は余計なプレッシャーをかけず9秒台達成の日を静かに待ちたいと思います。

◆大津市のいじめ自殺問題で1月31日に第三者調査委員会が調査報告書を発表しました。各所に黒塗りのある報告書を読むと胸が痛みます。学級規律の乱れの進行とともに、いじめが日常化していき、やがて「孤立化」「無力化」から「透明化」に至るプロセスを知ることができます。事実解明を怠り、むしろ隠蔽を図ろうとしてきた学校・教育委員会の責任は大きいと言わざるを得ません。
 その反省から、大津市教委の検討委員会は新年度以降のいじめ対策総合指針を策定し、各学校に行動計画作成を求めています。学校や保護者との調整、調査を担う第三者機関は、積極的に学校に出向いて子どもをいじめから守る活動を展開しようとしています。いじめ被害者家族の事実解明に向けた孤独な活動がようやくここまでたどり着きました。この悲しい事件を機に、子どもたちの安全と健康を確保できる仕組みが作られることを期待したいと思います。

◆4月19日には精神保健福祉法改正案が閣議決定されました。国会審議を経てH26年4月1日施行の予定です。今回の改正の要点は、精神障害者の地域生活への移行を促進するためとして、(1)精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)の策定、(2)保護者制度の廃止、(3)医療保護入院の見直し・医療審査会の見直しなどが示されています。
 従来、保護者には「治療を受けさせる」「医師の指示に従う」「患者を引き取る」などの義務が課せられてきたため、家族等保護者には大変な負担がかかっていました。そのため「あり方検討会」以降、強制入院の責任を保護者に負わせるのではなく、医療審査会など公的な機関の責任を明確にしていく方向で議論が進められてきました。しかしいざ蓋を開けてみると、保護者制度は廃止されるものの、保護者に代わって家族等の同意が入院要件となっています。これでは入院要件が緩和されただけで、家族の負担は変わらない可能性が高いです。今後どのような大臣指針が打ち出されるか不明ですが、この機会に入院のさせ方を中心とした議論から、総合的な精神保健医療福祉体制の充実に向けた議論への転換がはかられるべきだと思います。

(滋賀県精神神経科診療所協会 上ノ山)




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