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精神保健福祉協会だより 編集後記 抜粋

 第42号(2011.4.4)

編集後記

◆3/11発生した東北地方太平洋沖地震の被害の甚大さを前に、言葉をなくしています。マグニチュード9.0が日本列島をゆさぶり、変形させ、巨大津波で、東北地方沿岸部を中心に壊滅的な被害をもたらしました。確認された死者はすでに1万人を超え、行方不明者を合わせると2万数千人に及ぶとされています。多くの行政機能が失われ、地震発生後一カ月近くたっても被害の全容は未だ不明です。おそらく今後も被災者数は増えるものと思われます。その上に福島第一原発の事故が加わって、被害の様相を複雑にしています。

◆福島第一原発の事故に関しては固唾を飲んで見守るしかありません。それにしても危機管理の甘さ、事後処理の不手際などが目立ちます。小出しにされる情報が、事態の悪化を追認する形となっており、不安感,不信感が日々募っています。既にスリーマイル島原発事故以上の放射性物質が施設外に出たといわれており、今なお終息の目途がたっていません。復興へ向けて結束して力を合わせるべき時に水をさしています。放射能汚染という目に見えない恐怖は、福島県だけでなく日本人・日本製品全体に及び始めており、この国の将来に対して暗い影を投げかけています。

◆滋賀県心のケアチームは精神科病院、精神医療センター、滋賀医大などを中心に結成され、福島県に派遣されています。被災地におけるメンタルヘルスケアは組織的かつ継続的に行われる必要があります。原則的に被災地のこころのケアチームの活動を支援する形となります。日本精神神経科診療所協会からの医師・スタッフは仙台市精神保健センターが統括する仙台市こころのケアチームに加わり精神保健活動を行っています。津波に襲われた地域とそうでない地域との差があまりにも大きいようです。被災された診療所の先生方の苦闘が伝わってきます。石巻市の宮城先生は一階が浸水し、二階のデイケア室で患者さんたちと3昼夜過ごしたそうです。その後は保健所で診療活動を続けておられます。気仙沼市の小松先生は津波に加え火災で診療所が焼失したため、今は避難所を巡って無償で診察を続けておられます。

◆阪神大震災では、阪神間の多くの診療所が被災しました。燃えたり、壊れたりした診療所の医師たちが、保健所などで「精神科救護所」をたちあげ、ボランティアで精神科医療の継続性を保証するとともに、各避難所を巡回訪問して精神科医療のニーズに応えようとしました。このような官民一体となった活動が、やがて兵庫県心のケアセンターの立ち上げにつながりました。この時の経験が、サービス提供者が住民のもとに出向いてニーズを見出し、サービスをその場で提供する(アウトリーチ)という「地域こころの健康推進チーム」構想の一つのモデルとなっています。今回の大震災がそのようなサービス提供の在り方がより一般的になる契機となればと思います。

(滋賀県精神神経科診療所協会 上ノ山)




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