編集後記
◆殊のほか暑い夏でした。室内にいても熱中症になるおそれがあるということでこまめな水分、塩分補給を心がけられた方も多かったと思います。ゆるキャラのひこにゃんも彦根城でのパフォーマンスを午前中の1回のみに制限し、頭や首に保冷剤を巻き付けるなどの工夫をしたそうです。8月の終わりになってもなお寝苦しい熱帯夜が続いています。それでも窓の外に耳を澄ませば、虫の声が聞こえてきます。虫たちは気温よりも、日照時間に反応しているようです。
◆9月10日から16日は世界自殺予防週間とされています。我が国では12年連続して年間3万人以上の方が自殺する事態が続いています。これに対して、H18年に自殺対策基本法、H19年には自殺総合対策大綱が制定され、自殺防止に向けた取り組みが行われてきました。政権交代後の昨年9月から今年の6月まで、自殺者数が前年同期を下回り、それらの取り組みの成果かと期待されましたが、7月の警察庁統計では再び前年を上回ってしまいました。自殺には経済・生活問題、健康問題、家庭問題など様々な要因が関係しており、粘り強い総合的な対策が必要でしょう。その中で精神科医療は最後の砦の役割を担っています。
◆自殺を図った人の大多数は様々な困難をかかえ、追い込まれた末に、うつ病、アルコール依存症等の精神疾患に罹患しているといわれています。その他にも、児童虐待、DV、ひきこもり、不登校・いじめなど、さまざまな問題の背景にこころの健康問題があり、それへの取り組みが国家的な緊急課題となっています。7月の参議院選挙では、主要政党が何らかのかたちで、自殺対策やメンタルヘルス対策、精神科医療の充実などをマニフェストに掲げました。ようやく精神疾患、メンタルヘルスの領域が本格的に取り上げられる気運がみられます。
◆「こころの健康政策構想会議」ではWHOのDALYという疾患に対する政策的重要度の指標を用いて、精神疾患をがん、心臓疾患と並ぶ3大疾患と位置づけ、それにふさわしい精神保健医療改革を求めて、厚労大臣に提言書を提出しました。東京松沢病院の岡崎院長を中心にした私的団体からの提言書ですのでその評価には時が必要かも知れません。この度「こころの健康政策構想実現会議」と名前を変え「こころの健康推進を日本の基本政策に!」として、精神疾患対策基本法(仮称)の制定を求めて署名活動などをしていくことになりました。
(滋賀県精神神経科診療所協会 上ノ山)