探索8日目

すごい勢いで転がってきた小岩を、正面から受け止めて…… あの子―――仮に「たべられません」と呼んでいた歩行雑草―――は、その場に崩れ落ちた。 あまりにいきなりの事で、あまりに呆気なくて、最後の姿をしっかりと見取ってあげることもできなかった。 そこから、わたしはどうやって戦って生き残ったのか、ぜんぜん覚えてない。 山での戦いで、あの子が動かなくなったその日。 遺跡の外に戻っても、わたしは結局一日中泣いてた。 いちばん新しい仲間は……いろんな敵からわたしたちを守って、いちばん最初にさよならしちゃった。 わたしにエニシダさんみたいな強さが、アルクリーフさんみたいな頭の良さがあれば、 あの子は死なずにすんだかもしれない。そんな事ばっかり考えてた。 ふたりは強いだけじゃなくて、お友達も多くて、いろんな人と楽しくおしゃべりができる人気者。 それに比べて、わたしは、せっかくできた新しい友達を自分で守ることさえできなかった。 あの瞬間、わたしは、何をすればいいのか全然わからなかった。 自分がぺしゃんこにされるのを覚悟して、目をつぶってしまうことしかできなかった。 わたしは…… 本当にダメな子だ。 アルクリーフさんが、こんなことを教えてくれた。 動物も、植物も、死んだらみんな土になって、そして新しい命の元になるんだって。 だから、死んじゃってもそれでさよならじゃなくて、魂はどこかの新しい命に宿って、ずっとわたしたちを見てるんだって。 ……ずっと、見てるんだね。 強さがあれば、頭の良さがあれば、じゃない。強く、頭良く、ならなきゃいけないんだ。 そうじゃないと、わたしのために消えた命に申し訳ないから。 年のはじめには、一度家に帰りたいと思ってたけど……取りやめにした。 パパ、ママ、ごめんなさい。 サファイアは、りっぱな一人前の「冒険者」になるまで、家には戻りません。 パパとママの顔を見たら、絶対に甘えちゃうと思うから………… ---------- 【覚え書き・その3】フォウトさん 短剣使いのお姉さん。背が高くてかっこいい。 すごく優しい人、そしてちょっと怖い人。まるでわたしのママみたい。 強くて、頭も良くて、料理も上手で、面倒見のいいあんな人がいずれ「良いお母さん」になるんだろうと思う。 ……ちょっと、うらやましい。

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