探索13日目

「嵐の前の静けさ」って言うんだっけ、こういうの。 獣使いとの勝負が近づいて……キャンプでみんなとかわす言葉は減った。 訓練に、武器や防具の準備に忙しくて、どうしてもおしゃべりに使える時間が減っちゃう……そんな感じ。 出会って、いっしょに冒険するようになって、今まででいちばんの緊張感。張り詰めたキャンプの空気。 突破する人も出てきたみたいだけど―――あの獣は、やっぱり強い。 ひとつ間違えば、大怪我をするかもしれない。もっと悪ければあるいは――― きっと、みんなおんなじ不安を感じてるんだと思う。そんな緊張感。 もちろん誰も、口には出さない。 自分が死ぬよりも、他の誰かが死ぬ方が怖い。あの子のように――― ……今日の見張りは、わたし。 ひとりになると、ついこういうよくないことを考えてしまう。ペットのエニシダくんは、隣で寝てる。 でも、そろそろ、交代の時間。最後に、左目でまわりの様子を確かめてから寝よう。 ……あれ、これは――― 血の海に倒れる、男の子の姿が見えた。たぶん、あの獣使いの男の子。 誰かがまた、あの場所を突破したのかな――― いや、違う。 思わず、あっ、と声を上げた次の瞬間、わたしの左目には、暗闇の中でも真っ赤に燃えて光る獣の翼と…… その炎で赤く照らされる、男の子が見えた。もちろん血の海なんてもう見えない。 今見えたのは、何だったんだろう――― ---------- 【覚え書き・その8】セレナさん 金髪のお姉さん。 本当はヴァンパイアだって言ってたけど、やっぱり見た目ではあんまり人間との違いがわからない。 実はすごい長生きしてるらしいけど、あんまり年寄りくさくはなくて話しやすいお姉さん。

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