探索7日目

探索七日目。 いよいよ持って危険な状態になってきた食糧事情、そして肉体的にも精神的にも全員の疲労が目立つようになってきた。 このまま行けば全員、今以上に酷い状況で探索・戦闘をしなければいけない事は目に見えていた。 どこからともなく出てきた一度帰還しようとの意見に、反対の意を示す者は誰もいなかった。 久々に遺跡の外に出ることになるだろう。折しも年の終わりと始めを過ごせることになる。 荒事に明け暮れていた面々にとって、そして私にとっても久しぶりにのんびりとした時間が過ごせそうだ。 のんびりとした時間、とは言え。あまり私自身はその状況になれていない。 未だに広すぎる場所だと外敵の影がないかと周囲を気にしてしまうし、遮蔽物が周囲にないと眠れない。 コマンドの習性、というやつだろうか。いい加減にこの習性をどうにかしたいものだが、なかなか抜けない。 先日、アーヴィンさんに戦いに際して笑んでいるようだとの指摘を受けた。 本人にしてみればもちろん他意無く、軽い気持ちで言ったのだろう。 実際そうだと思うし、そのことに関して禍根があるわけでもない。 ―――問題は第三者からそう見られているという事実。 確かに隊の中では一番接的距離が近い戦い方をしているのが私なのだ。 アーヴィンさんは弓使いだ。故に軽く見えるが観察眼は確かなのだろう。 おそらくほんの少しの異変をも敏感に察知するのだろうと踏んでいる(実際そういう家系の出のようだ)。 他者の生命を脅かし、時には断つことを楽しむなどという概念は持たなかった私にとって、何気ないからこそに深い指摘だった。 ―――エニシダさんが、倒した生物の腑分けをしているのが見える。 丁寧にそれを解体し、使えるものは摘出し、手際よく並べ直している。 冒険を続けるのに必要なことだし、いちいち臓物やら脂やら、ましてや断末魔に構ってはいられない。 しかし、腑分けをする氏の昏く紅い瞳は、なんというか負の色が見えないのだ。 私もあのように見られてるのだろうか。 -------------------------------------------- メンバーの事を綴ろうと思っていたのに、前回は描いている最中に襲撃を受けて書けなかった。今日は忘れずに記録しておこう。 TC隊には若い女性の割合が高い。しかし見てくれは若くても、私よりずっと年が行っている場合もあり侮れないのだ。 そんな中、特にこの二名は冒険者然としていないように見える。 シャーク隊のアルクリーフさんは、外観を言うなら小柄で可憐な少女で済むだろう。 しかしその実体は「歩行雑草」と呼ばれる種族である。肌も薄緑色、耳の位置からは葉が生えている。 遺跡に出現する彼らは筋骨隆々とした者が多いが、彼女がこの外観なのは召喚主の趣味なのだろうか。 しかしさすがに思考形態は人間に近いようである。 召喚されてから日が浅いのか、頑張って人間を学ぼうとしている姿は微笑ましい。 同じくシャーク隊のサフィさんも小柄な少女と言って差し支えないだろう。 幼さが残る顔立ちに単眼鏡と、あまり冒険に向いて居なさそうな見てくれなのだが、最も向いて居なさそうなのは 『先天的な記憶障害』という点だろうか。 見聞きしたことを忘れてしまうらしく、こまめにメモを取っている。 引き替えに視力は凄まじく、自信のある私でも敵わないのだ。 双方生きることに尽力を尽くしている少女だ。年下の先輩と言えるかもしれない…… 【追記】 クリスマス、という行事がある。私はよくは知らないのだが、つまり言うところの年末を祝うものなのだろうか。 その会場に潜入することになり、ドレスを着る羽目になってしまった。 なるべく動きやすいものを選んだのだが、斯様なものを着慣れている女性には感服することしきりだ。 どうせ中は戦闘服なのだが。 エスコートが居ないと会場には入れないということで、エニシダさんに頼んで役を引き受けて貰った。 ……一体全体如何な出自の人なのか、タキシードを異様にすんなりと着こなしている伊達男っぷりだ。 かえって目立ちはしないだろうか。 ちなみにとある機関からの依頼での潜入であり、任務内容は秘密としておこう。

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