探索6日目探索六日目。 本格的に皆の食糧不足と疲弊が目立ってきた。探索深度はもっと深まるというのに、ここからこの状態で些細なミスも許されぬ 状況はあまりにもリスキーだ。そろそろ引き返し時だろう。一週間も遺跡の中に居るなどと、考えてみたら尋常なことではない。 幸い水脈があちこちにあり、衛生状態はどうにか保つことが出来るのだが、精神衛生上にはあまりいい事とは言えないだろう。 そう考えるとパーティメンバーの面々、特に女性陣の精神力には舌を巻く。むしろ女性の方が閉鎖空間での耐久に強いと、何か の本で読んだこともある。 サフィさんから作ってもらった護石―――タリスマンだが、予想通りというかなんと言うか、華美ではないにせよ繊細な彫刻が施 されていた。 貴婦人が付ける貝を削った真っ白なブローチ。カメオといったか、あれに似た風合いがあり、どうにもこの無粋極まりない戦闘服 には似合わないような気がした。もっと女性らしい女性―――セレナさんであれば似合うだろうと思う。 戦闘で割れては困るので、ハーネスに付けたポーチの中に入れておくことにした。寝る前に取りだして眺めるとしよう。 どうでもいいといえばどうでも良いのだが、最近は何故か見知らぬ方々に声を掛けられる。 声を掛けられること自体はかまわないのだが、逆にそんなに目立つ風貌なのかと自分を省みてしまうこと暫し。 短く切った色素の薄い髪に、無骨な戦闘服、短剣二丁。 とびきりの美女というでもなく、だからとて目を覆うほどの醜女というでもなく。 ―――謎だ。ひょっとすると、この母上が織ってくれたマフラーの柄が珍しいのかもしれない。 どのみち、人脈を作っておくに越したことはない。 別働隊メンバーの事も書いておこうと思ったが、書こうと思った瞬間異臭が風上から漂ってきていた。 見れば黒光りする外骨格の大型節足動物が二匹。甲殻蚯蚓という怪物が砂山の影からこちらを窺っている。 じきに襲いかかってくるだろうと思うので、此処までにしておく。 日記を書いていて殺されては、レギオン家末代までの語りぐさになってしまう。 メンバーの話はまた今度にしよう。