探索1日目

あの奇妙な招待状という“因縁”をこの手にしてから何日が過ぎただろう。 どういう仕組みで俺の元にわざわざ送りつけてきたのかは、知らん。 或は、罠なのかもしれない。獲物を誘き寄せるための甘い、餌。 だが、手がかりぐらいは掴めるかも、しれない。正直、行き詰まっていたところ だからな。与えられた機会は十全に活かすとしよう。 いくら疑ってみたところで前へ進めるものでもないのだから。 ……罠ならば、踏み潰してでも進んでやろう。 この島における研究成果を後に伝える為。或は、志半ばで倒れた時の為に。この 島での活動を、このノートに記そう。ヒトの記憶が薄れ途絶えても、文字は変わ らずに言葉を伝えてくれる。 エルタからの出発便に乗り、特に何事もなく“島”へと辿り着いた。拍子抜けす るほど順調すぎて色々疑ってしまうのは悪い癖だろうか。 港には一山当てようという山師達が溢れかえってたいした賑わいだ。まるで落と した菓子に群がる蟻の群れのようだ。 まぁ、俺も他人のことをどうこう言えた身ではないが、な。所詮はその蟻の中の 一匹にすぎない。 招待状に導かれ、各地から集まった冒険者達は人種も職業も色とりどりだ。鋼の 身体を持つものや、見た事も無い未知の種族の者達もいくつか散見された。なか なか興味深い。そして徒党を組むもの、一匹狼を気取るもの。……様々だ。俺は 幸いなことにとあるグループに声をかけられたのでそちらに同行することとなっ た。たかがヒト一人の身で出来ることなどたかが知れてるのは身に染みている。 しかし大陸での通貨が使えないのはともかく(この島での取引は魔石と呼ばれる 石との交換のみらしい。)支給される食料が“パンくず”と“草”というのはど うにかならんものか。せめてパンの耳ならまだともかく。……まぁ、いい。自給 自足しろということなのだろう。それはいつものことだ。出来れば港で魚の一匹 でも釣っておきたいところだったがそれは許可がされないらしい。やれやれ。 いくつかの品物を受け取り、準備は整った。人が多いせいで思ったより時間がか かってしまったのは誤算だった。待ち合わせの時刻までもうあまり余裕が無い。 ……これを記している余裕はあるのだが。 記していたら余裕が無くなったとも言う。 では、待ち合わせ場所へ急ぐとしよう。まずは、“始まりの右足”へ――

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