探索手記-24日目-

(簡単なメモ書きのようなものが残っている) ・時間軸の整合性 ・矛盾の回避 ・問題点の解消 (メモ書きはここまでのようだ)  二十四日目の探索も滞りなく終わった。  新たに修得した技は、使用方法を間違えなければ非常に有効なもののようだ。  実験とはいえこの技を受けてしまったアルテイシアさん、アーヴィンさんには申し訳ないが十分なデータを取る事が出来たので勘弁してもらおう。間も無く退去期限なので使う機会はなさそうだが。  なんでも地殻変動による災害の危険性が高まった、というのがこの一時退去の理由らしい。  確かにここ数日、妙な地鳴りを感じる事が増えた。  東洋のとある島国ではこの手の地鳴りや地震が頻発しているそうだが、それでもこの頻度ほどではないだろう。何しろ一日に数度、十に届く事さえもある。  それも、夜ではなく昼、辺りが騒がしくてもはっきりと聞こえるのだ。それほどの地響きが頻発するというのは、自然現象ではあり得ないと言ってもいい。 (尤も私が知らないだけで実際は「有り得る」のかもしれないが)  探索中に、妙な力の滾りを感じる事もある。大気中にある、魔力を活性化させるもの──マナとか魔素、あるいは精霊力と呼ばれるもの──が増えているせいだろう。  普段から大気中にあるこの物質は、天候や季節、周囲の環境次第で量が変動する事はあるが、基本的にその変動量は緩やかなものだ。しかし、この増加量は「基本的」の範疇に収まるものではない。  よく考えてみると、力の滾りを感じ始めたのは妙な地鳴りが頻発するようになってからだ。地中に眠っていたマナが放出されつつあるとしたら、この地鳴りも納得が行く。  極端に濃度を増したマナは、あらゆる生物に影響を与えるものだ。そしてその影響は、突然変異に等しいものを齎す事すらある。  それらを回避するための一時退去命令だとしたら?生態系だけではなく、土地そのものにも影響を与える規模のものだとしたら?  ここに長く留まるのは得策ではないかもしれない。退去期限である二十五日目の探索を終えたら素直に出る事にしよう。

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