探索手記-11日目-魔法には様々な要素がある。 精神力を直接撃つ物、相手の内的要因に干渉するもの、自然界に存在する様々な要素を扱うもの。大別すると主にこの三つに分けられる。 そのうち自然界に存在する要素は簡単に「属性」として分けられる事が多い。西方の地水火風、東方の木火土金水が有名な所だろう。 表現は違っても「自然界の要素」である事には変わりなく、多少の法則の違いを除けばどのような所でもこれらの要素を使った術の行使が可能だ。 この遺跡では、地水火風に加えて光と闇という二つのものによって定義されている。 光は陽光に端を発する天の要素、闇は影を代表とする光の対極─光の性質を逆転させたもの、という事になるだろうか。 私は闇への親和性が強い……そう思い込んでいた。だから私は光を無視して闇への親和性を高める事を主眼にした。 闇が馴染み易いというのは、私の性質そのものに端を発している。 私は一般的な生物としての性質を捨てた、「夜」の側の者だ。それ故に光とは相容れないと思っていた。 が、温泉跡で聴いた言葉──うろ覚えだが──と私自身の性質に大きな違いを見つけた事で光と相容れないというのが思い込みだと知った。 「光は敵だ」 そのような言葉だったと思う。光を浴びると灰になる、若しくは焼ける…という事なのだろう。 しかし、私にとっての光とは単に眩しいだけのものであり、物理的・精神的障害を負うものではない(但し、「眩しい」と感じる事によるストレスはあるかもしれないが)。 光と相容れないのであれば、眩しいという程度では済まないだろう。つまり、私にとって光とは「多少扱いにくいが敵ではない」という事だ。 それに気付いた事で、光への親和性も加えて高めることに決めた。 それをパーティメンバーに話すと「特性が打ち消されはしないか」という警告を受けた。それも尤もだ。 尤もだが、闇への親和性が増すという事は光を使った攻撃──例えば太陽光を増幅する「ブルータルサンライト」のような──に弱点を持つ事になる。 その弱点を埋めるという意味でも、闇ほどではないにしろ光への親和性を高めることは無駄にはならないと踏んでいる。 さらに、闇属性の魔法は状況を変化させるものが多く、直接的にダメージを与えるものが少ない。 それとは逆に、光属性の物は直接的にダメージを与えるものが多く揃っている。 不足しがちな火力を補うためにも、光への親和性を高めて魔術の一つとして使えるようにするのは悪くないだろう。 そんなわけで、私はここ二日を使って光への親和性を高める訓練をしている。 明日はその仕上げだ。今日の修練で使えるようになった「ライトニングブラスト」とはまた違う術を扱う事になる。 練習で使う事が出来ても本番ではどうかは解らない。それを確かめるのは明後日だ。 まずは、明日の練習試合でライトニングブラストを実戦投入できるかどうか。それ如何で今後の予定は変わってくる。 TCのメンバー内では、数日の間を置いて「赤い翼を持つもの」に挑むという話になっている。 未だ誰も突破していない強敵だ。私達が勝つには、相応の準備が必要だろう。 私が光属性の新術を習得するのもその準備の一環だ。ここで失敗したならば予定は大きく狂う。 私自身の魔術素養を信じ、訓練しよう。