滋賀県精神保健福祉協会・平成14年度総会 特別講演の報告

                    NPO法人サタデーピア  赤間由記江

 愛知県コロニー発達障害研究所の三田優子先生による平成14年度総会特別講演「ホームヘルプサービスがスタートして〜地域生活を支えるために〜」の報告をさせていただきます。
 三田先生は、精神障害者、知的障害者の生活支援が専門で、愛知県精神医療審査会の委員、全家連の保健福祉研究所の研究同人もされ、全国的に御活躍されています。

 (1)精神障害者のホームヘルプサービス実現まで(平成7年度〜) 
 (2)試行事業から見えた事 
 (3)精神障害者ホームヘルプサービスの研修会を通して参加者が求めていたもの 
 (4)市町村の実態 
 (5)サービスの中身 
 (6)現在の課題F事例から、という項目で講演して頂きました。

 精神障害者のホームヘルプサービス実施以前に、一度でも精神障害者へヘルパーを派遣した事がある市町村は、全国で約22%、大都市では約36%(平成9年 全家連調べ)と、大都市では3割を超え、精神障害者へのホームヘルプサービスの必要性がうかがえる数字が出たそうです。

 平成14年度からようやく精神障害者のホームヘルプサービスが本格的にスタートしましたが、市町村の実態については、ホームヘルプサービスの体制の未整備(5月の段階で、担当課が未決定という市町村も)、ヘルパー研修の場の不足からくるヘルパー不足、ケアマネジメントの基盤の脆弱さなど、国、都道府県を含めた責任・課題が明らかになりました。

 動き出せない理由は、医療・専門機関との連携のまずさ、PR不足、ニーズ把握の遅れ、ヘルパーの絶対数の不足などがありますが、何よりも、国が作成した今年度のホームヘルプサービスの予算が低く、人もお金も制度もない中で実施されている所に大きな問題があるようです。当然、ヘルパーを支える環境も弱く、専門職・機関のヘルパーへの理解・協力が得られず、ヘルパーがケースを抱え込んでしまう事も少なくないそうです。制度自体が未整備のため、関係機関も対応できない事もありますが、ヘルパーのバックアップ体制を早急に整備する重要性を話されました。

 精神障害者ホームヘルプのサービス内容については、精神障害者が望むサービスは、1時間程度の家事援助と少しのアドバイスなどのため、短時間の上、身体介助に比べ単価が低いので、事業所によっては精神障害者のホームヘルプサービスを敬遠する所もあるようです。一方ではアドバイスを重要な援助と位置付けて、身体介護の中の自立支援という項目で高い単価をつけて対応している所もあるそうで、地域格差が大きいのが現状だそうです。

 事例の紹介では、家族の希望が優先されたサービスが実施され、当事者に不利益が生じたケース、定期的に関わるヘルパーの間接的な力で地域を巻き込み、住民と利用者が変化していったケース、ヘルパーの役割の説明が行われなかったため利用者が混乱し依存が高まったケース、契約時に利用者の希望を確認し、本人のライフスタイルに沿った支援を実施し再入院を防いだケースなどを紹介し、同じ失敗を繰り返さないためにも多くの事例を話し合い、今後の支援に役立てる事が大切だと話されました。

 最後に、「保健婦さんは医療を背負ってくる。ワーカーさんは福祉を背負ってくる。でも、ヘルパーさんはね、社会の風を運んでくれるから有り難いんです。」という利用者の言葉を紹介され、今日のお話が滋賀県のホームヘルプサービスの参考になればという言葉を頂いて、特別講演が終了しました。

( 滋賀県精神保健福祉協会便り第16号より引用 )



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