私は仮に明日最後の時が訪れても後悔しない生き方をしてきただろうか。 少なくともそのつもりで今まで生きていたつもりだった。 やられるのが自分ひとりだけならば諦めることもできよう。こういう運命だったと。 一緒にいた仲間も一緒にやられてしまうのならばそれも仕方ないだろう。 だが、私が生きて。誰かがやられてしまうパターンはどうだろうか。 ─つまり、そういう覚悟を決めること。 ここまで15日という短い間ではあったがいつしか当たり前のように話したり協力したり助け合ったりする。 そんな、このような居場所に心地よい気分を感じる。ついこないだまでは全くバラバラ。初対面同士であったのにだ。 まったく、出発前に大丈夫とか言ったりしてらしくないとは思ったが。そんな気分ではあったのだ。 ─自分がいる世界の中で今日という日までの日常を失いたくなかったのだろうな。 もし、昨日までの日常を全て失ったら私はどうなるのだろうか。予想もできなかった。 それは今まで感じたことのない純粋な恐怖であったに違いない。 …こうして焚き火で囲んで心の準備をする時間があって本当によかった。 *** ここから公式の日記・レポート提出用です。 *** 遺跡の1層部・南西付近の砂地の道先にその少年はいた。 彼の名前はエドという。クリムゾンウィング2匹を率いる使役者だ。 何故このような場所にいるのか背後関係がいまいちつかめないが、 妨害する以上は排除する方針で彼の者と戦った。 実力者と情報を仕入れていた私達パンサー隊はもちろんその準備を怠る事のないよう細心の準備を進めてた。 私についてはギリギリで習得したコールクラウドという天候を操る魔法をなんとか覚えたのだ。 練習試合があったとはいえ、いきなり実戦投入なので結構不安でもあったのだが。 このコールクラウドって魔法は暗雲を上空…というか上部に呼び出す魔法だ。 暗雲で察することができるが、この暗雲は雷が極めて発生しやすい。 もちろん私の魔法で制御しているので基本的には私達に電撃が落ちたりすることはない。 で、なかったらこんな魔法は危険でとてもとても使おうとは考えないであろうな。上手く完成されている魔法だ。 ─まぁ、エドが電撃を反射するのは予想外ではあったが。 そしてエゼさんのペット…というか使役している巨大蟻が倒れる瞬間に ダーククラウドの召喚でおおよそ私の仕事はほぼ終わったといっていい。 いくら休憩して十分整えたとはいえ消費の激しい魔法を最初に集中して使ってきたのだ。 さすがにこれ以上は日頃使っているマジックミサイルとカースで精一杯だった。 エドとクリムゾンウィングの攻撃はとても激しいものであった。 エゼさんの巨大蟻と召喚したダーククラウドには非常に可哀想なことをしたと思うが。 もし、あの痛烈な攻撃と倒れる間際に襲い掛かってくる道連…。 少しでも私達に当たると考えただけでもぞっとする。すまない。お陰で助かった。 もちろん、相手がダーククラウドや巨大蟻を攻撃する間に攻撃をしつづけたフォウトさんとエゼさんの力があってこその話。 それまでに十分な攻撃を相手に与えてなければいけなかったからだ。 幸いにもダーククラウドが倒れる頃にはクリムゾンウィングを1匹倒せたのでこの後は有利に戦うことができた。 もし、仮に少しでもタイミングがずれていたら大変なことになっていたと思うが、深くは考えるのはよそう。 結果、私たちはエドを倒す事ができたのだ。 ところで。何とかエドを倒した後のことなのだが… 私達があれだけ攻撃したエドは痛い仕草をしていてもまだまだ余裕を感じたのは気のせいであろうか。 決して止めを刺し忘れたわけではない。倒して刺そうとする前に立ち上がっただけだ。 そのときのエドは進路妨害するつもりで立ち上がったわけではなかった。 むしろその逆で私達に遺跡の先に進行する許可を与えたのはどういうことだろう? ……少なくともあの少年がまだ全てを出し切ってないと感じたのは私だけであろうか。 もし、仮にそうだとしたら一体何の目的があったのだろう…。 (*ナミサの日記〜15日目抜粋)

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