探索24日目
島を一端去る日がやってきた。
荷物を纏め、冒険用の道具は身につけ、安宿を引き払う準備は万端だ。
以前から考えていたが、TCのメンバーがバラバラに地上で過ごしているのはまだしも、連絡の付きづらい宿を転々としているのは、あまり調子の良いことではないように思える。
次に島を訪れるときには、何処かメンバーが一堂に会する事の出来る場所が何処かにあればいい。集会所のようなものでもあればいいのだが―――そのあたりは地殻変動の止んだ島を見て回ってから決めよう。
実際島のことを、遺跡とそれに付随する宿場以外は殆ど知らなかったのだから。現地民が暮らしていると知ったのも、ついこの間だ。
少しは身の回り以外にも目を向けた方が良いのかも知れない。
あとはひとまずの締めくくりとして、巨大な蟻地獄を屠ってから帰還し、地上での大乱戦に参加する、という計画が立った。
大乱戦―――冒険者同士の所謂トーナメント戦。退去勧告が出ているにもかかわらず、地殻変動のギリギリまで催そうというのだから、酔狂なこと限りない。
開催側もそうだが、参加する側も酔狂だ。単独行動の冒険者などは、既に退避した者も多いというのに。
当然参加する我々も酔狂なのだろう。おそらく最後の大乱戦になる。島が再び開放された時には、もうこの催し物はない―――
通常の探索の方だが、ただ巨大蟻地獄を屠るのは易いと言うことで、変則的な編成で挑むことになった。
私は―――何故かエニシダさんと組むことになった。確かに蟻地獄は倒すに易いとは言え、パワーバランス的におかしな事にならないだろうかと思っていたのだが、エゼ君やアーヴィンさんがこの組み合わせを推したらしい。
……よく意図が分からない。エニシダさんも苦笑いを零してはいたが特に異論は無さそうだった。
丁度いいと言えば丁度いい。以前の大乱戦での、あの奇怪な感覚の正体が分かるかもしれないのだ。彼の御人の何かが関わっていることはほぼ確実なのだから。
9人の冒険者が集う一団、Triad Chain。
互いに個を保つ、丁度いい距離感を持つことが出来た、宝玉探索集団。
次回も全てのメンバーがここに集うかどうかは分からない。
だが、この三合の鎖を忘れることは生涯無いだろう。
ナミサ君がのんびりと、いつものマイペースな様子で海風に髪をなびかせている。
アーヴィンさんが豪気に笑いながら、エゼ君の背中をバシバシと叩き、叩かれたエゼ君は憮然としたふくれ面を向けている。
セレナさんはふざけあう二人を面白そうに眺め、サフィさんは仔虎を抱いて茫洋とした瞳を天に向け。
アルテイシアさんは無機物と全く思えない自然な笑みを浮かべ。
アルクさんは天の理に邪気無く興じ、エニシダさんは厳しく温かく地の果てを見据え―――
私は―――
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