探索17日目
探索十七日目。
発見した階段から下は恐ろしく深い第二層だった。
本当に遺跡の中なのかと疑うような天井の高さ、朽ちたそこから降り注ぐ陽光に月光。目眩がしそうだ。
協議の末、用心を重ねて進むということになり、階段を降りたすぐ下にビヴァーグすることになった。
しかし、自分でも分からないうちに、相当疲れていたらしい。火の番をしているときに、うっかりうとうとと眠ってしまったのだ。
そんなときに見る夢というのは、決まって禄でもない夢なのが通例である。この晩も例外はなかった。
いつもの『死』の悪夢が、濃いどろりとした闇が意識野に忍び寄る。
しかし―――
足音がした。とは言ってもゆっくりした、殆ど音のしない足音だ。
生者の気配。
悪夢の中のそれは、気配に押されてゆっくりと散っていった。
誰だろう。
半覚醒、という状態がある。
眠っているのに意識は起きていて、朧気にだが眠っていることを自ら意識できている状態だ。
誰かがいる。敵ではなさそうだ。
―――突如、ふわりとした感触に包まれた。毛布か何かだろうか。
温かい。本当に温かい……。
その「誰か」は、眠っている私の隣に腰を下ろした。
おそらく小さくなってしまっただろう、焚き火の火が大きくなる気配がした。
そのまま。
おそらくそのまま、火の番をその「誰か」はしてくれていたのだろう。私を起こすことなく。
朝になって目を覚ますと、誰も横には座っていなかった。
一瞬夢かとも思ったが、確かに暖かな毛布は掛けられていたのだ。
―――誰、だろう……。
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