探索7日目

今日は、外の世界へ戻る日だ。 正直、身体は限界に近い。とても嬉しいはず…なんだけど。 どこか、寂しい自分がいる。危険と隣り合わせの日々。 確かに自分は成長していた。少しは強くなった、と思う。 ほっとするけれど、まだやりたいような。欲張りだろうか。 もっとも、その前に大きな山場がある。 昨日からTriad Chainは山でキャンプを張っているのだ。 山の敵は、平原や砂地とはわけが違う。 噂でしか知らないけれど、魔法を操る黒豚。それに風を僕とする、大鼬… 幸いにも各隊は遭遇しなかった。でも喜んではいられない。 危険が少ないよう、テントの設営地点は時間をかけて選んだのだけれど。 やはり第三キャンプの周りではジジジ…と嫌な音が聞こえていたのだ。 ナミサさんに聞いたら巨大なこおろぎだとか。 歯が鋭くて強い後ろ足。数は少ないが、決して油断はできない。 なにせ、食料が足りないのだ。明日は食事抜きで戦うことになる。 普段どおりの力は出せないかもしれない。 この7日で自分がどれだけ成長したか試されるだろう。 ……やってみせる。 そして何とか無事に、TCの皆さんと帰りたい。 きっと温泉は気持ちいいだろう。 ―――――決してやましい気持ちではない。後日のため、反論しておく。 ついでに、僕はお、お、おっぱいスキーなんかじゃない。(幾つか震えた字) 女性の胸に目がいくのは、こう、なんというか。 話す時、あんまり目を見つめると失礼な気がするだけで。そう、礼儀なんだ。 アルクさんはそれができないから困ってしまう。それだけだ。 なのに、なんだか酷い誤解が広まっている気がする。おかしい。 僕はエロスなんかでもない。真面目なハーフエルフなんだ! …あとは、いつものように書いておく。 いつものように食事をしていつものように用意をした。 料理はちょっと不思議な味だった。もちろん、美味しかったけれど。 ザワークラウトか、また作ってもらおうかな。 フォウトさんの料理はどこか懐かしい気持ちになる。 そして戦闘なのだが、今日は練習試合があった。 相手はイーグル隊。自分を試す絶好のチャンスだ。 予想通り戦いは、激戦になった。 距離があるうちからナミサさんの召喚術、アーヴィングさんの早射ち。 そして……情けないことに、僕は弓を構えられなかった。矢筒に弦がひっかかったんだ。 セレナさんに牽制するつもりだったのだけれど……あの格好に動揺してしまった。 もし僕の矢であの瓶みたいなものが割れたら………だ、だめだ。鼻血が…(少し赤い染み) そう言えば、アルテイシアさんの時も狙いが勝手に胸へ。 撃つ瞬間、ちょっとだけ期待してしまった。反省しないといけない。 結局、パンサー隊が勝利できた。ナミサさんの召喚のおかげかもしれない。 フォウトさんと二人でふんばって、召喚と魔法で撃ちぬく。 パンサー隊の方向が見えたような気がした。 でも再編するようだし、試せるのはずっと先かな。 ちなみに、明日も再びイーグル隊との練習試合。 今度こそは………(再び小さな赤い染み) そうこうしているうちに蚯蚓たちも倒していた。 あのレベルの敵には、もう負ける気がしない。 この先はいい食料源になってくれるだろう。 そして戦闘後。鍛錬中、偶然試した技がうまくいった。 練習試合で試してみよう。かなり疲れるから、一度きりだろうけれど。 それより印象的なのは、作製の時間。 貝殻からセレナさんの防具を作るところまでは普通だったのだけれど… アルテイシアさんに頼まれたものが問題だった。 女性のバスト、ウエストの造形。なんでも体のラインは防具などで維持するとか。 作ろうとしたけれど、途方にくれていた。だって見たことも無いのに。 いや、母さんは別だけど。全然大きさが違う。母さんは結構なだらかだしなぁ。 ともかく、この木をどう加工しよう。柔らかさも必要だ。 …なんてことを考えていた。すると、突然目の前が真っ白になって――。 気がついたら、目の前に完成品があった。 僕が作ったんだろうか。美しい形、大きさ……思わず頬を寄せたくなるような形。 も、もちろんそんなことはしない。ものの例えだ。 恐る恐る触ってみる。とってもドキドキしたが、製作者の義務だ。義務。 すると……滑らか。つるつるに仕上げられている。 問題の硬さも、木を一度繊維にして編み上げたのか多少の柔軟性はある。 押せばややへこむ。女性らしさを何とかアピールできそうだ。 しかし、どういうことだろう。全く記憶が無い。 まさか父さんが出てきて作った……いや、それはない。 服の上からでも正確にサイズを測る眼があるけど、作る方はダメだったはずだ。 信じられないが、事実は事実。今後の検討課題とすることにする。 何か興奮しながら、続けて作ったエニシダさんのコート。 赤い枝という未知の素材。強い上に伸縮性が高く、素材としてはかなり優秀だった。 デザインは判らないけれど、強度的には気に入って貰えるはずだ。 大きな自信になった一品だった。 今日はこんなところかな。やっぱり長いけれど。 それだけ充実していると思う。島に来て、本当に良かった。 起こったこと、書き残せるだけ書いておこう。 ……それにしても、今日の日記は見られたらおしおきされるな。 森には持っていかないようにしよう。

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