探索13日目「逃げろ!」 紅蓮の炎。 飛び交う悲鳴。 ゆっくりと倒れる、自分。 ……そこまで見た時、目が覚めた。 夕飯後、いつの間にかうたた寝していたらしい。 哨戒前に腰を落ち着けた、ほんの少しの間だ。 手は汗ばんでいた。 そう。 僕達は明後日、あの紅の翼を持つ魔獣……そして赤毛の青年と戦うことになった。 今日はそのため、移動をせずにキャンプで鍛錬に励んだんだ。 その後夕食をとり、次の哨戒までしばらく自由な時間があった。 そこでうかつにも、寝てしまったんだ。 本当ならイメージトレーニングをする時間だったんだけれど… 汗をふきながら悔やむ。 そして、気付いた。 ……震えている。 手が、足が、胸が。 恐怖、なのだろうか。 初めての経験。 昔、幼い頃……偶然森で大きな何かに出会い、足がすくんだのを覚えている。 その時はただ、泣きじゃくるだけだった。 気がつけば、父さんと母さんが側にいて…… 何もできなかった。 でも、今は違う。少しはパーティーの力になっているつもりだ。 ……逃げるわけにはいかない。 「危険だと判っていても、進まねばならない時がある」 それが漢なのだから。 …とにかく。明日の戦いから本番だと思える。 力を温存しなくてはいけないからだ。 それに備えて、今日は早く寝ることにする。 決して写真を出せないからじゃない。 ………つつかれたから、でもない。 お休み。