探索8日目

第一次探索の最終日。 帰還しようとする俺達の行く手を阻むのは……岩と、蟋蟀。 強固なキチン質の外骨格を纏い、驚異的な脚力で跳躍し、強靭な顎で噛み砕こうとする蟋蟀。 虫は厄介だ。恐れを知らず、痛みにも鈍い。 そして見た目通りの硬さと質量を備えた岩が斜面から勢い良く転がり落ちてきて襲いかかる。 アレが人間に当たったなら、下手すれば即死も十分在り得るだろう。 明確な殺意を孕む、落石。 だが、その洗礼を浴びることになったのは俺ではなく……サフィの歩行雑草、だった。 先の戦闘でのダメージも残っていたが、もとより、植物の身体であの重量に耐えきれるわけもなく。 岩の回転に巻き込まれ、ぐしゃぐしゃになって……彼が再び立ち上がることは、無かった。 本当に僅かな付き合いとなってしまった。別れはいつも唐突だ。 永遠の別れなら、それは尚更に。 全てに平等なるもの――それは、死。 ……そう。次に冷たく骸を晒すのは俺かも、しれない。死と隣り合わせの道を歩いているのは 常に覚悟しているつもりだが、こうして突きつけられるとやはり意識してしまうものだ。 ----------------------------------- 帰還のタイミングと折よく重なったのでおかげで年末年始はゆったりと迎えることが出来た。 ………ゆったり? まあ、探索時と比べればゆったり、だな。騒がしいが。 思えば、こうして誰かと過ごす正月というのも何年振りのことだろうか。 ましてや新年会など。 ……独りに、慣れ過ぎていたのかもしれない。 後でせっかくなので“森”で教えてもらった温泉にも行ってきたが……いい湯だった、とだけ 記しておくとしようか。

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